企業立病院から民間病院へ~恵寿金沢病院 上田幹夫病院長インタビュー

2014年7月、NTT西日本金沢病院は「恵寿金沢病院」として生まれ変わった。こちらの病院は、金沢の小京都と言われる主計町(かずえ町)が目の前に広がり、兼六園や金沢の中心地である香林坊も近く、文化と自然に囲まれた風光明媚な場所にある。 超巨大企業グループから、地域医療の中核病院「恵寿総合病院」を運営する社会医療法人財団董仙会へ。経営統合を経て半月、どのようなビッグバンが起こったのか? 病院長の上田先生へ、統合直後の率直なご感想を伺った。(取材日:2014年7月16日)

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超巨大企業立病院から地域医療の中核を担う法人へ GALENUS(以下、G)超巨大企業立病院から、地域医療の中核を担う社会医療法人へ経営統合されましたが、今の率直なご感想をうかがえますか?

上田病院長(以下、上田)当院は2014年7月1日に、NTT西日本金沢病院から恵寿総合病院の属する「社会医療法人財団董仙会」へ経営統合されました。そして、統合からのこの半月は、私の人生の中で最もストレスフルな時間と言っても過言ではありません。

と言うのも、順調な病院を統合すると言うわけではなく経営合理化の一環として、そして経営基盤の強化が最優先事項ですから、今まで慣れ親しんだ仕組みや制度も、改善をしないといけません。

一番大きな変化は、管理上のシステム面です。医師や看護師を大きく動かすことは、患者さんの不利益につながる可能性がありますから、経営、管理、事務部門の合理化を優先的に図り、オープン前の4月から、董仙会本部から人員も派遣して頂き、来る7月1日に備えました。

例えば、院内の情報伝達網は、NTT仕込から恵寿スタイルへ、そして、情報伝達網に加えて管理システムも7月1日に一気に変わりましたから、その準備から変更後の不具合対応まで、管理・事務職員は随分とがんばってくれました。

しっかり準備はしてきたものの最初の1週間は、やはり想定外のことが起こるのも常、この期間はやはりストレスフルでした。

ただ、この大きな変化と体験は、「経営母体が変わることはこういうことなんだ」と病院長の私も職員も実感でき、変革のために必要なことだったと思います。

今までの経営体質では、やはり病院自体の存続は厳しいものだったと思いますし、ストレスフルなこの期間を経験したことで、病院全体の意識が覚醒し「病院を改善していこう」とはっきりと現実を認識できたと思っています。

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G)上田先生は、県立病院、企業立病院、民間病院とご経験されています。

上田)石川県立中央病院に18年、そしてNTT西日本金沢病院へ病院長として赴任したのは2014年4月ですから、着任3ヶ月で経営統合となりました。

たった3ヶ月という短い期間でしたが、私自身がNTT西日本金沢病院というカルチャーに触れたことで、今も一緒に働いている職員の気質を理解することができたことは、非常に良かったと思っています。旧病院の気質と統合先の法人の思い、この両方に触れたことで、経営者としての方向性が少し見えたように思います。

また、経営統合となっても、多くの職員が引き続き就労の意思表示をしてくれたことで、組織を大きく変更することもなく、患者さんへの影響を最小限にできたのでホッとしています。

そして一番の感謝は、恵寿総合病院からのサポートです。80年の病院経営のノウハウや組織の強さを改めて実感しました。非常に細かいところまでケアがあり、さすがだと感じています。

G)恵寿金沢病院へ変わったことで、地域の皆さんの反応はいかがですか?

上田)地域の方々の中には「あの病院はNTT職員専用の病院」と思い込んでいる方も多く、職員は大企業だから「絶対につぶれない」という漫然とした感覚を持っていたかもしれません。しかし「病院名が変わった」「経営母体が変わった」と言うことで、地域の方々には「自分たちの病院」と思っていただけると思いますし、職員は「地域の医療を守るために自分たちにできること」を考え始めましたので、意識が少しずつ変わって行くと思います。こういう意識を大切にして行きたいですね。

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血液病臨床の地理的不均衡を解消するための、病病連携を加速させる 140913_keijyukanazawa_Dr.ueda3.jpg G)どんな病院にして行きたいか、具体的なイメージはお持ちですか?

上田)当院の大きな柱は「血液病臨床」です。これは地域にとっては極めて特殊な病院だと思います。私自身も血液内科医として臨床をしていますが、今後も一定のニーズがあり、しっかりと担保していきたいと考えています。

「血液病臨床」に関してお話をすると、この疾患を抱えた患者さんにとって、石川県は能登半島~金沢~南加賀まで非常に長く、医師偏在という地理的な不均衡があります。金沢市近郊で血液疾患になれば、大学病院や県立中央病院、当院も含めて高度急性期から回復期まで、いくつかの病院がリレーションを組んで治療を行っています。

しかし、例えば能登の輪島で重い血液疾患を抱えた患者さんは、わざわざ金沢まで出向き、治療後も数時間かけて金沢まで診察に来なければなりません。

病院経営に関しては、例えば、能登半島での血液病の症例は少ないですから、この領域ために多くの医療資源、人的資源を投下することは難しいと思います。

であれば、地域からの求めによって、合理化、集約化が自然発生しセンター化していく方向に動いて行きます。そして、高度な治療ができる施設は金沢に集まってしまった。結果的に、重い血液の疾病を抱えた患者さんは、金沢に行かなければならないとなってしまったわけです。

しかし、この地理的な不均衡を放置して良いわけではありません。

当院は、血液病臨床を含め、大学病院などとの連携を活発に行っています。その中で例えば、能登半島在住の患者さんが、在宅治療もしくは経過観察になった場合、わざわざ金沢に来なくても、七尾市の恵寿総合病院で診察をしてもらえれば良いことになります。

血液病診療には、PET-CTをはじめ高度な検査設備と技術が必要になる場合が多いですが、恵寿総合病院は全く問題ありません。

ですから、引き続き大学病院などと連携を密に取りながら、法人内では経営統合の利点を生かし、能登半島の方々にも当院と恵寿総合病院との密な連携で、血液疾患に対する医療サービスをスムーズに提供していけるように、病病連携を加速させていきたいと考えています。

そして、今までは高度医療と言われていた骨髄移植なども、標準治療の範疇に入ってきましたから、こういった治療の実施にあたっても、スムーズに対応できるようにして行きたいですね。

G)本日は、お忙しい中ありがとうございました。

社会医療法人財団董仙会 恵寿金沢病院 病院長 上田幹夫先生プロフィール 140913_keijyukanazawa_Dr.ueda4.jpg

【専門分野】
血液内科、輸血医療、HIV医療、内科一般

【略歴】
昭和55年3月 金沢大学医学部卒業
昭和59年3月 金沢大学医学部大学院修了
昭和62年4月 金沢大学附属病院助手
昭和63年5月 恵寿総合病院内科医長
平成2年11月 米国留学
平成8年4月  金沢大学医学部講師
平成9年4月  石川県立中央病院 血液免疫内科部長
平成23年4月 石川県立中央病院 免疫感染症科部長(兼任)
平成26年4月 NTT西日本金沢病院 院長
平成26年7月 恵寿金沢病院 院長(現職)



special thanks to Dr.UEDA
&Mr.MURAMORI(keijyu public relations officer)
photo by YOSHIO KATAYAMA/text by GALENUS
※編集部の希望により、上田先生には写真撮影にお付き合いいただきました。
appeared in 2014/10/06