『米盛病院ラーニングセンター』の果たすべき役割を聴く!~米盛病院ラーニングセンター長 松木薗和也先生インタビュー

2014年9月9日、米盛病院の新築移転に伴ってオープンした「米盛病院ラーニングセンター」。280人収容の講堂や8つのシミュレーションルームなど、民間病院の施設とは思えないキャパシティを誇る。
すでに、多発外傷後に焦点を当てたプライマリケアのための「鹿児島PTLS」などの研修を積極的に開催しており、日本でも屈指のインストラクターを招聘して、ハイレベルなラーニングを行っている。
どのような構想を描いているのか? 松木薗センター長にお話を伺った。

(取材日:2014年10月18日)

141203_yonemori_Dr.matsukizono3.JPG米盛病院ラーニングセンター センター長松木薗先生。


『米盛病院ラーニングセンター』が担う2つの大きな役割

GALENUS、以下G) 2014年9月9日の米盛病院新築移転に伴い、病院併設のラーニングセンターもオープンしました。ラーニングセンターの役割をお伺いできますか?

松木薗先生) ラーニングセンターには大きく2つの役割があります。

ひとつは、米盛病院が属する社会医療法人緑泉会の職員の技術やスキルの底上げを行い、より「安全な病院」をつくることです。

そして、もうひとつは、鹿児島の医療・介護の技術やスキルアップのための「学びの場」としての機能です。

まず、職員に対しての「学びの場」ですが、「安全な病院」を作るためにはラーニングを通じてレベルの高い医療人を育てなければなりません。ラーニングセンターでは、職員それぞれの職務範囲、役割に対するコンピテンシーの向上が軸になります。

いきなりハイレベルな領域を担える職員ばかりではないので、例えば、職能レベルを初心者~達人まで分けたとして、そのレベルに応じた学習環境を提供します。

新卒で入職したばかりの職員に対しては、現場OJTで役立つような達成指標などを基に、勤務内で1時間程度のプログラムを数回行うなど、ラダー的な階段方式でレベルアップを促します。

また、中堅レベルの職員に対しては、達人レベルまでの技術習得を目指せるよう、自己研鑽も含めたプログラムを進めています。加えて、技術の追求ばかりでは組織は成長しませんから、マネージメントスキルなども平行して習得できるようにします。

新人職員に対する中堅職員のアプローチも、新人の状況により声がけひとつとっても多様性が求められます。自信を持ってスキルアップしている新人もいれば、不安を抱えている新人もいますから、中堅職員は、新人の多様性に即座に対応できるマネージメントスキルや調整能力を習得することで、今後ますます加速するチーム医療や他職種連携に役立っていくと思います。

G) 医療技術の習得のだけでなく、マネージメントスキルも平行して学べるのですね。

松木薗先生) 医療技術の向上については、様々なカリキュラムに加えて、最先端の研修機材を導入した「シミュレーションルーム(オペと病室の2種類)」も用意しています。

例えば、オペ室を再現したシミュレーションルームでは、機器の操作方法に加え、実際の急変対応など、リアルに近いシミュレーションが可能なので、技術習得には非常に効果的です。加えて、習得した技術を最大限活かすためのマネージメントや調整能力の向上も大切です。

医療や介護は、チーム医療が前提として成っていますから、管理職用のマネージメントスキル、という狭義のものではなく『チームマネージメント力』が必要となります。そういったスキルも、医療技術と平行して学べる環境を整えている最中です。

G) ラーニングセンターというと座学が中心の「塾」のようなイメージを持ってしまいがちですが、米盛病院ラーニングセンターはいかがですか?

松木薗先生) 勉強と言うとどうしても「本を読む」ということになってしまいがちで、勉強係がいて、資料をつくったりまとめたりする。それをみんなで読む、というカタチが多いと思うんですね。

この方法が悪いということではないのですが、ここから一歩も二歩も踏み出した「学びの場」でないと、急速に変化し続ける医療・介護環境に追いつけなくなってしまうと考えています。

「動くための知識」や「判断するための知識」に結びつけるためには、2Dの座学だけでなく3Dの「体験」という要素が大切です。座学だけだと知識レベルは向上しますが、実践医療や介護のスキルアップは鈍いと感じています。

141203_yonemorilearning1.JPG141203_yonemorilearning2.JPG141203_yonemorilearning3.JPG  米盛病院ラーニングセンターは、体験型ラーニングをコンセプトに最新研修機材を導入。座学だけでなく、五感を使った講義で知識やスキルを体得する。

G) 実践医療へつなげていくラーニングで必要な要素はどのようなことでしょうか?

松木薗先生) 当センターの研修科目の中にはもちろん「座学」も含まれますが、座学だけで終わるのではなく、座学や自己学習で得た知識をシミュレーションに反映し、五感を使って体得していく「体験」が必要要素だと思います。

具体的には「体験」「行動」「振り返り」の3要素が必須で、特に「振り返り」は、座学ではなかなかできないので、シミュレーションを活用します。

シミュレーションでは、他の参加者の前で、実際にプレゼンや行動を行いますから、客観的に自己評価を行う「メタ認知」につながります。また、シミュレーションで、「正しい」「正しくない」の判断や、手順の再確認も行いますから、客観的な判断基準や能動的な判断をする訓練にもつながります。

こういった流れを繰り返すと、自分で学びながら他の参加者の評価を行うことになり、教える側の感覚も身につきます。

教える側、教わる側の双方向の感覚が身につけば、調整能力のスキルアップにもつながっていきます。

このようなシミュレーションを活用した「体験型」のラーニングの機会を増やし、知識を授けるだけではない『双方向性の学びの場』をより多く創造したいと思います。

地域医療へ貢献するラーニングセンターの役割とは?
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G) 五感で体得するラーニングは有機的な学びにつながりますし、何より参加者が楽しく学べる環境が、自己研鑽欲を強めるのではないかと感じました。もうひとつ、鹿児島の医療、介護のスキルアップについてはどのようにお考えでしょうか?

松木薗先生) 当ラーニングセンターがより強く機能することで、県外への医療人の流出を防ぐための一助になりたいと思いますが、そこに到達するためには、地域や他院へのアプローチも非常に重要だと思っています。

医療従事者であれば誰でもこのセンターを活用でき、スキルが伸ばせる環境を整えることが大切です。

例えば、当院が毎年開催している「鹿児島PTLS(Primary -care Trauma Life Support)」は、鹿児島県内はもとより、近県からも医師や研修医が集まり、外傷に対する知見やスキルを向上し、自院へ持ち帰り活用しています。
わざわざ大都市圏に行かなくても、地元で最先端の技術を学び再確認できますから、効率的な学習が可能になっています。

また、組織へのアプローチも大切だと考えています。

例えば、「院内のラーニングをどうしてよいかわからない」という他院からのご相談があれば、課題や問題点を共有し、カリキュラムを作成して提供したり、当センターの研修やセミナーを活用してラーニング上の課題を解決したりすることも検討しています。

これからの医療、介護を中心としたヘルスケアを考えると、医師や看護師はもちろん、在宅なども当然カバーしなければなりません。病院だけでなく、介護領域の施設や法人なども視野に入れて、幅広い「学びの場」を用意して行きたいと思います。

また医療従事者だけでなく、患者さんやご家族への「学習の機会」も検討しています。

今後、在宅を強化する流れはますます加速していきます。その環境下で大切なのは、患者さんをサポートする家族の存在です。ファーストエイドの知識や患者さんと向き合う心づもりなど、ご家族向けのラーニング講座も実現していきたいですね。

医療と介護のシームレスな連携は、ますます加速しますから、当センターとしても切れ目のない「学びの場」の提供をしていかなければならないと強く感じています。

『米盛病院ラーニングセンター』の未来像

G) 今後の米盛病院ラーニングセンターはどのようになっていくのでしょうか?
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松木薗先生) 知識や技術の習得はもちろんですが、「学びの姿勢」や「学び方の提案」を強化し、「ラーニングアシスタント」が輩出できるような仕組みも考えたいと思っています。

「ラーニングアシスタント」は、最近の学会などでも出てきているワードですが、教育係や管理職というイメージではなく、例えばOJT中に、本人の自己研鑽を促したり、本人の抱える学びの課題を把握して学び方を提案したりという「学びのコンサルタント」的な存在です。このセンターから、こういった「人財」が育っていって欲しいと思います。

医療や介護は自己研鑽の積み重ねですから、その学びを効率的に実践してもらうために、当ラーニングセンターが役立てるよう、様々な企画・運営を実施していきたいと考えています。

G) お忙しい中、ありがとうございました。

社会医療法人緑泉会米盛病院 ラーニングセンター長松木薗 和也先生プロフィール
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【専門分野】
一般内科・呼吸器科・緩和ケア

【略歴】
鹿児島大学出身
米盛病院 ラーニングセンター長(現職)
総合診療ユニット長(現職)

日本内科学会 総合内科専門医
日本プライマリ・ケア連合学会 指導医
ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
ACLS EP/ACLS/BLSインストラクター・ファカルティー
AMLSインストラクター・ファカルティー
JMECCインストラクター・ディレクター
ICLSインストラクター・ディレクター
EMERGO TRAIN SYSTEMインストラクター

special thanks to Dr.MATSUKIZONO&Miss.HACHIGOU(yonemori public relations staff)
photo by YOSHIO KATAYAMA/text by GALENUS
※編集部の希望により、松木薗先生には写真撮影にお付き合いいただきました。
appeared in 2014/10/18