プライマリ・ケア連合学会 丸山泉理事長インタビュー

150516_Dr.maruyama1.jpg日本の医療改革が進むにつれ、「プライマリ・ケア」の役割りとその重要性が、さまざまな場面で議論をされているのは、ご存知のとおりです。

近年では、プライマリ・ケア連合学会が認定する『プライマリ・ケア専門医』『家庭医療専門医』がクローズアップされ、病院では「家庭医療学センター」や「家庭医療科」の新設も増えてきました。

一方で、これらに呼応する形で、日本の専門医制度の大きな改革の中で、19番目の基本領域としての「総合診療専門医」の設置に向けて協議が行われ、日本医師会でも、かかりつけ医の強化を進めています。

これら全ては、日本における『プライマリ・ケアの強化』という文脈性において、同じ方向を向いていると言えます。

ガレノスでは、プライマリ・ケアの重要性を再度理解するために、日本プライマリ・ケア連合学会丸山理事長にお話を伺いました。

※appeared in 2014/09/05

初期診療から『地域をマネージメントする専門医』へ
150515_Dr.maruyama2.JPGGALENUS) 近年、プライマリ・ケアに対する理解が進み、『プライマリ・ケア専門医』『家庭医療専門医』も少しずつ増えてきています。改めまして、プライマリ・ケアの概念をお伺いできますか?

丸山先生) 「プライマリ・ケア」の役割りや重要性の認識は、1978年、第1回のプライマリ・ヘルスケアに関する国際会議にて採択された「アルマ・アタ宣言」をきっかけに、さらに世界に広がりました。

「プライマリ・ケア」の包含する概念は、非常に幅広いので簡潔に申し上げるのは難しいのですが、特に「プライマリ・メディカルケア」を中心に簡単にお話をすると、病巣を治療するための臓器別医療に留まらず、治療から予防に繋がる「ヘルスケア」までを、『全人的』に、患者その人を診ることを入り口として、そのご家族、そして患者の住む地域までを『トータルでマネージメントしよう』ということです。

1996年の米国国立科学アカデミー(National Academy of Sciences, NAS)が定義した中に『primary careとは、患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである』と説明されています。

本来は発展途上国のため、ということであったのですが、矛盾をはらんでいたのはむしろ先進諸国の医療の問題でありました。

日本でも、病巣だけを診るのではなく、人と人との関わりの中で治療を進めていく『全人的医療』の大切さが次第に広がりました。

臓器別で絶えず進化する高度専門医療は、これからもとても大切で、ますます発展すべきです。しかしその一方で、今この瞬間、患者さんと向き合っているプライマリ・ケアの現場の医師のほうが、圧倒的に多いことも事実です。

プライマリ・ケアの重要性の高まりは、高度専門医療中心で進んでいくことに対しての、疾病構成のほとんどを占める「Common Disease」(よくある病気)への対応の不安や心配が背景にあると思います。

ただし、プライマリ・ケア強化の意味は「不足しているところをどうしたらよいか」ということであり、高度専門医療に対するアンチテーゼではない、ということを付け加えておきます。つまり、高度専門医療とプライマリ・ケアの両輪の強化であるということです。

大切にしなければならない、我々医療人の『態度』
150516_Dr.maruyama3.JPGGALENUS)プライマリ・ケアが求める『全人的医療』とは、どのようなことでしょうか?

丸山先生)患者さんの多くは専門的医療知識を持たず、「Common Disease」(よくある病気)を抱え、不安を感じて来院します。

「命に直結する病気ではないか?」「高度専門医療が必要なのではないか?」。

現状はこういった不安がきっかけとなり、重複受診に繋がっていることも事実です。

そして、重複診療は患者さんに不利益である、というだけでなく、医療コストを押し上げることになり、医療業界全体に影を落とすひとつの因子になっています。

プライマリ・ケアが求める「全人的医療」は、患者さんを一人の個体として、またその個体が、家族や地域社会と有機的に関係し合っているという概念も内包しています。

そして大切なことは、我々医療従事者の「態度」です。

特に、医師に代表される全ての医療職が『患者に近づく』という努力をもっと重ねても良いのではないでしょうか?

これを学ぶことを言葉に変えれば『医療面接の方法論を学ぶ』ということになります。

専門職というのは、スキルや知識を備えているのは「当然」なのですが、その専門性が時として「パターナリズム」に繋がることがあります。

「より知っていることが偉い」「人が出来ないことが出来る、それが偉い」のではなく、患者さんと一緒に物事を考えながら、最善の診断やヘルスケアに繋げていく。

こういった医療人の歩み寄りが、患者さんの安心感や信頼感に繋がっていくのではないでしょうか?

そして、もう少し視野を広げれば、地域の住民と一緒に、病気の治療や予防、そして地域の健康を考えて『マネージメント』していけるような、これまでの概念とは異なる新たなパラダイムシフトを要する専門医が必要と考えているのです。

「共に考える」

これから先の医療にとって、ますます重要視されていくことでしょう。

※参考
アルマ・アタ宣言:JICA原文翻訳ページへ
プライマリ・ケア連合学会:プライマリ・ケアとは?