県民と医療機関の連携がつくる岩手県の地域医療のみらい岩手県立中央病院
望月病院長 

岩手県立中央病院 病院長
望月 泉

photo救急患者の積極的な受け入れで高度急性期医療を推進する中核病院

岩手県立中央病院は、「高度急性期医療を推進する県民に信頼される親切であたたかい病院」を基本理念としています。
「急性期医療」とは、重大な病気や怪我の進行を食い止め、命を救うために、発症から手術を含む高度な治療が必要な期間に、集中して治療を行う医療のことです。そして、病気や怪我の回復が見込める目処をつけ、ご自宅や専門医療機関、介護施設など、より生活に近い場所へ、患者さんを戻すことを目的にしています。
基本理念を達成するために、当院では、7つの行動指針を定め、命を救う救急・災害医療の体制を充実させ、優れた医療人材を育成し、さらに健全な経営を行うよう努力しています。

7つの行動指針

  • 1・良質な医療の提供
  • 2・優れた医療人の育成
  • 3・地域医療機関への診療支援
  • 4・救急医療の充実
  • 5・災害医療の体制整備
  • 6・臨床研修体制の充実
  • 7・健全で効率的な病院経営

当院の最も大きな特長は、県民の命を守る「高度急性期病院」として、「24時間365日、救急車の受け入れを断らない」ことが挙げられます。年間の救急車受け入れ台数は約6,400台にのぼり、この数字は、盛岡市とその周辺自治体、約50万人が住む地域の救急車出動回数の半分以上を占め、これほど多くの人口を抱える地域で、ひとつの病院が半分以上の救急車を受入れる状況は他に例を見ません。
消防からの救急車受け入れ要請のうち、受け入れが実施できた割合を、「応需率」と言いますが、この応需率向上のために、内科・外科など、全ての診療科の医師がPHSで直接、地域の診療所の医師や救急隊員と連絡を取り合える環境を整え、また、常に主要な診療科の専門医が院内に待機する万全の当直体制を構築しています。
数年前から行っている、病院長を中心に職員一丸となった努力と、県民の皆様の支援と協力の結果、99%以上という高い応需率が実現できています。
当院では、緊急時に『命を守る』救急医療の他にも、各診療科の特長を活かし、最新鋭の検査機器や医療器具の導入も積極的に行い、高度な医療の提供を実現しています。また、「DPCII群」という病院群に分類され、高機能先端病院として大学病院に準じる機能を持つと設定されています。
例えば、心臓カテーテルや大腸・胃の内視鏡を使ったポリープの除去手術は、最新の器具と技術を用いて、患者さんの負担を最小限にして、症状によっては、日帰りでの手術を可能にしています。さらに、がんの検診や治療では、最新のPET検査で早期発見に努め、ピンポイントで高精度に治療できる外部照射用放射線治療装置を導入して、一日約60名のがん患者さんへの治療を行い、成果を挙げています。

photo

左上:朝のカンファレンスに可能な限り参加する望月病院長。
右上:患者さんの診察を通じてより良い医療を模索し続ける望月病院長。
左下:年間6,400台、盛岡医療圏の過半数の救急車を受入れる救急センター。
右下:一日平均約1,100人の外来患者と約46人の新規入院を受入れる病院ロビー。

県全体の地域医療を支える医師派遣と女性医師の働く環境の整備を積極推進

高度な医療を実現するには、優秀な人材の確保が欠かせません。そのため、当院では、女性医師の積極雇用を推進しています。医師国家試験の合格者の30%は女性ですが、結婚・出産を経験して現場を離れる方が多い現状があります。しかし、働く環境を整備すれば、優秀な女性医師が医療現場に復帰することができます。当院では、ライフワークに合わせた時短勤務などの制度を積極的に取り入れ、家庭や育児と仕事を両立しやすい環境を作り、女性医師が活躍できる職場を創出しています。
もうひとつの施策は、多数の研修医受け入れとその育成です。岩手県は、人口10万人あたりの医師数が全国平均233.6人に比べて、192.0人程度にとどまり、「医師不足」の地域です。当院は、県の基幹病院として、一日平均9人、年間延べ3,300回以上、医師の少ない地域の県立・市町村立病院へ医師を派遣し、県全体の地域医療を支え続けています。

医師派遣で主要な役割を担うのは「レジデント」と呼ばれる研修医です。当院で最先端の高度医療や救急医療を経験し、医師派遣で地域医療に関わることが魅力となり、多くの研修医が集まっています。
2016年6月には、「日本病院学会という、全国の医療関係者が一同に集う学会を盛岡市で開催、私が学会長を務めます。この成果によって、当院の活動があらためて全国に認知され、さらなる人材確保につながると考えています。
さらに、地域医療を発展させ、県民の皆様の安心な暮らしをサポートするためには、地域の医療・介護施設と基幹病院との密接な連携が必要です。
高齢社会を迎えて、介護保険を利用する患者さんが増える中で、患者さんが退院後に安心して生活に戻るために、その患者さんを担当するケアマネージャーと病院との連携が重要になります。現在、要介護の患者さんが病院に入院するときに、患者情報をケアマネージャーに詳細に伝え、退院後の自宅や施設での療養をスムーズにする仕組みづくりに取り組んでいます。
さらに、地域の診療所(かかりつけ医)との連携も非常に大切で、高度な検査や治療が必要なときの診療所からの「紹介状」に関しては、当院へご連絡頂いてから10分を目安に診療所へ「返書」するため、患者さんのスムーズな受診予約を実現しています。また、診療情報の共有によって確実な診察と治療を行うなどの連携の取り組みを、地域医療福祉連携室を中心に行っています。

photo「癒やす」医療への転換によって終末期の願いを叶える環境を作る

私は消化器外科の医師として、がん医療にも携わっておりますが、終末期のがんの患者さんへ病状と予後をしっかりご説明すると、最後を自宅で迎えたいと思われる方が多くいらっしゃいます。1960年代頃は、半分以上の方がご自身の希望通り、自宅で家族に看取られていました。
しかし現在は、医療の進歩と高度成長による核家族化があいまって、自宅での最後を希望していて80%以上の方が、病院で最後を迎えているという状況になってしまいました。
一方で病院は、少しでも患者さんを「長く生かそうとする」場所です。がんの末期や老衰など「完治がむずかしい病気」でも救命・延命をするために必要以上に患者さんに負担をかけてしまうこともあります。従来の「助ける」医療はすでに限界がきており、これからは、緩和ケアなどで痛みや苦しみをやわらげながら「癒やす」医療が大切だと感じます。
患者本人と家族が、自宅で安心して最後を迎えられる環境作りに向け、そのための医療の提供と、地域の医療・介護施設や行政、そして県民の皆様との連携を広げていかなければならないと考えています。当院の相談窓口では、様々なご相談を承っています。急性期医療はもちろん、退院後の、より良い暮らしと療養環境を見つけるお手伝いにも力を入れてまいります。

photoprofile岩手県立中央病院 病院長
望月 泉(もちづき いずみ)

東北大学医学部臨床教授、日本医師会勤務医委員会副委員長、全国自治体病院協議会常務理事、岩手県医師会常任理事、日本病院会理事、日本病院会岩手県支部支部長など要職を兼務。自治体病院の病院長として、地域医療への提言を行う一方、医師会との連携など、医療界全体の発展に寄与する活躍を続けている。2016年6月に盛岡市で開催の第66回日本病院学会では、学会長を務める。

GALENUSニュース
ニュース一覧
GALENUS INFORMATION
お知らせ一覧