第65回日本病院学会 相澤孝夫 学会長インタビュー社会医療法人財団慈泉会 相澤病院
理事長・院長 相澤孝夫

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第65回日本病院学会が、6月18日(木)、19日(金)の2日間、長野県軽井沢町を舞台に開催されます。2025年ビジョンに向け、2018年の医療・介護ダブル改定を一応の目処に社会制度改革が推し進められ、激動の医療改革がすでに始まっています。その中で、日本の医療、そして病院の「あるべき姿」を指し示す本学会の持つ意味は非常に大きく、注目が集まっています。
GALENUSでは、日本病院会の副会長であり、本学会の学会長を務められる相澤病院理事長・病院長の相澤孝夫先生へ、学会のポイントや特徴、そして「想い」を伺うためインタビューをお願いいたしました。


2025年に向けた激動の医療改革に大きく影響を与える「第65回日本病院学会」を聞く!

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GALENUS) 早速ですが、第65回日本病院学会が、2015年6月18日(木)~19日(金)の2日間、長野県軽井沢町を舞台に開催されますが、学会のメインテーマ「日本における医療改革のあるべき姿~地域で治し・支える新しい医療~」に込められた『学会長の想い』をお伺いできますか?

相澤先生) 今、国や厚生労働省が、医療提供のあり方を変えようとしているのは、みなさんご存知の通りですが、病院が国や厚労省から「言われたから変える」というのは、私はおかしな論点だと思います。

日本の医療の現場では、様々な「変化」が起きていることは、皆さん、日々感じていることだと思います。だからこそ、病院が「自ら考え」、そして急激な変化にしっかりと対応していくために「何をするべきか?」を提言し、それを実行していくのが「医療改革のあるべき姿」だと思います。

日本の人口動態は大きく変わり、それに伴い、疾病も変化が起きています。

こういう「変化」に病院がしっかり対応できないと、これから大きく変わっていく日本において、病院は社会から「置いてきぼり」になってしまうのではないでしょうか?

すでに始まっている人口動態の変化とその傾向は、少なくとも、これから20年続いていきます。今生まれた子どもが、20年後ようやく大人になり、結婚や出産を迎えるわけですから、「人口が増える」と期待しても何も始まりません。

P.F.ドラッガーも述べているように、20年後の人口動態は「すでに起こったことの未来」であり、唯一、確実な未来予想図なのです。

確実な未来予想図は「変化」を指し示しているのに、「病院だけはこれまで通りで良い」ということは、全く当てはまりません。

国や厚労省の視点に立てば、「病院は変わるのだろうか?」と心配していることと、労働人口が減少しますから、国の財政も20年後は、当然、今よりも厳しくなります。だから、財政事情に合わせて変革を促し、医療提供体制のあり方を変えようとしているのです。

ここで私が思うのは、財政が厳しいからといって言われるがままの「受身の変革で良いのか?」ということです。

病院が自分たちで考えて、自ら率先して、社会にフィットするように変わっていくことが、本当のあり方なのではないか、そんな想いを込めて「日本における医療改革のあるべき姿」と題しました。

これからはっきりしていることは「若い人が減って高齢者が増える」ということです。私たち相澤病院もすでに経験していますが、高齢者が増える中で「治すだけ」ではなく、治療後の「生活」や「住まうこと」まで関わっていかないと、地域の人々を支えることはできない、ということが解ってきます。

そして、社会全体の中での「病院のあるべき姿」を考えていくと、「治す」「支える」に加えて「予防」という観点が必要になってきますし、介護が必要な患者さんを考えれば、「介護の重度化予防」まで視野に入れて、幅広く担っていかなければならないと思います。

そう考えると、社会全体で、病気になりにくくなるような「健康増進」という視点の取り組みも必要となってくるでしょう。

このように患者さん=地域住民を「病院を中心に街全体で支えて行く」という試みが、ますます必要になる中で、病院がしっかりと踏み込めるように、学会では議論を促したいと考えています。

「地域の中で我々病院はどうするのか?」

こういった想いをサブタイトルの「~地域で治し・支える新しい医療~」に込めました。

今の日本には医療改革は必要です。受身のスタンスではなく、自分たちが社会のスタンスにフィットしていくためには、当然、「今変わらなければいけない」というのが、私の基本的な考え方なんです。

こういったことも、ぜひ学会で大いに議論していきたいと思います。

150419_Dr.aizawa_3.jpgGALENUS) 変化をしなければならない中で、病院全体の「今」をどのように思われますか?

相澤先生) 病院経営者も医師も人間ですから、変わらずに済むのであればそれに越したことはありません。変化をしていくというのは、時間も労力もかかることですから、なるべく変わりたくないと思うのは自然なことだと思います。

従来「病院は社会の共通資本である」と言われてきました。しかしそう言いながら病院は、少し高いところから社会を眺めていて、社会や世間から、距離を置いてきたのではないか、と感じるときがあります。「社会は変わろうとも病院は変わらずで大丈夫」というおごりに近い感覚があるのではないでしょうか?

そういう時代は過去の遺物となり、「病気を治療する」ことだけを見るのではなく、社会がどうなっているのか、国の財政はどうなっているのか、という広い視野でまずは医療を捉えてみて、その上で、自分たちがどう変わるか、ということを議論していくことが肝要だと思うんです。

「自分たちの病院だけが存在している」のではなく、あくまで社会の中の一員であり、日本という国の一部分であるわけです。当たり前のことなのですが、しかし旧態依然の感覚の中には「医療は国民の命と健康を守ってやっているんだ」という、旧態依然の感覚が残っているのかもしれません。

いよいよどうしようもなくなって、診療報酬や医療法などで制限がかけられて、ようやく変わっていくというのでは、『志』や『意思』というものを削がれてしまいますから、それではあまりにも寂しいですよね。

だからこそ、今回の学会では、軽井沢の自然の中で、少し時間をゆっくり取りながら、「病院のあるべき姿」を含めて、しっかり考え議論できたらいいのかな、と思っています。

注目すべき学会のテーマが、これからの日本の医療を指し示す

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GALENUS) 3月上旬ですでに演題が予定数に達したということですが、今学会の特徴と言えるテーマを伺えますか?

相澤先生) すべての演題に「想い」が込められていることは言うまでもありませんが、特徴としてあえて挙げるのであれば「病院と街づくり」や地域包括ケアシステムに向かっていく中での「トータルヘルスケア」について、今学会では特に議論を促したいところです。

また「国際化」も重要なテーマと考えています。ただ、単純に医療従事者のやり取りをしましょう、ということではなく、それも含めて、グローバルな視野から日本の医療を考えることが肝要です。

昨今、医療の質について多くの議論が成されていますが、日本国内だけを見ていても、やはり限界があるのではないでしょうか?

以前と比べても、日本国内で外国人を多く見かけるようになり、考え方や価値観の多様化を目の当たりにする機会も増え、判断基準の相違も日常的に感じるようになりました。

しかし、「患者さんを治療する」という本質は、日本でも外国でも同じはずで、治療に国境はありません。目の前に患者さんがいれば「治療をする」のが医師であり、病院であるからです。

だからこそ「医療の質」や「病院の質」をしっかり担保しなければなりません。自分たちの国の中でこっそり作った基準で動いても、それは、国際的には認められないでしょう。

だからこそ、グローバルな視野の中で、質の高い医療とは何かを考え、日本の医療のポジション、ひいては自分の病院のポジションを、しっかりと考え、創っていかなければならないのではないでしょうか?

今学会では、グローバルな視野の中で「医療の質」や「病院の質」を議論するきっかけとして、国際基準の医療機能評価機関「JCI」(Joint Commission International)のCEOに来日頂き、しっかりと、多くの時間をかけて、学会の中で考えて行きたいと思っています。

グローバル視点のマネージメントの気づきや手法を、ぜひ、持ち帰っていただきたいと思います。


日本の医療の原点や「原風景」を、もう一度見つめなおす
150419_Dr.aizawa_5.jpgGALENUS) 世界との比較の中で、日本の医療をどのように感じていらっしゃいますか?

相澤先生) 日本の医療は、世界的に見ても「人に優しい医療」だと思うんです。

海外と比較すると日本は、病院だけでなく開業医の先生も含めて、非常に密に医療資源が担保されていて、しかも「地域住民=患者さん」のそばにある。だからこそ、日本の医師は、患者さんと密接に関係を持ち、あるいは社会の中に容易に溶け込める距離感を持っていると思うんです。

開業医の先生を含めて病院の存在は、その街の文化を司るひとつの要素で、日本の「人に優しい医療」の風景だと思うんです。これは大切にしていかなければならないと思います。

しかし一方で、人口は目に見えて減って行きます。大切にしなければならない「人に優しい医療」が、日本の実情に、財政も含めて合っていないのであれば、やはり変えていかなければならない。

地域によっては「集約」や「集合」をキーワードにした取り組みが必要になるかもしれません。また、高齢者が増えれば、住み慣れた地元で治療をしたいと思うのが心情ですから、そうすると治療後の生活支援、介護支援、住宅の手当なども必要で、全部含めて地域の医療になっているのではないでしょうか?

このように日本の医療や病院は、病気を治療するだけでなく、患者本人とそのご家族や地域を巻き込んで、生活全般に携わっているところに、特色があるのだと思います。

昔の、日本の原風景にいた医師や病院は、治療だけでなく、回復やリハビリまで担っていましたし、その先の介護や、時には患者や家族の生活まで考えて治療を施してきたと思うのです。

今、日本の医療の進歩は目覚しく、世界トップレベルの技術を誇っています。この加速的な進歩は、機能の細分化や専門性に寄るところが大きいと思います。だから、個々のレベルは高くなっています。

しかし、人口動態が変わり社会の変化が起こると、専門的な機能ばかりでは難しい部分もあり、社会は時代の変遷と共に、総合的な機能も合わせて求めるようになってきたと感じます。

学生のころに学んだ「病気を見ずして人を診なさい」だけでなく、「社会や家庭までもしっかり診なさい」ということが、これからの医療にはとても大切な要素だと思います。だからこそ、病院や医師はしっかりと社会に溶け込まなければいけない。

「社会の中に容易に溶け込める距離感」をもう一度しっかりと考え直す時期にさしかかっていると強く感じます。

このようなアイデンティは脈々と残っていて、これも日本の医療の良いところのひとつであると思います。

学会では、グローバルな視野の中で、「日本の医療はどうするの?」「日本の病院はどうするの?」ということも含めて、問いかけたいと思います。


150419_Dr.aizawa_6.jpgGALENUS) これから日本の医療はますます「変化」を求められると思います。今学会への抱負と、学会参加者へ向けて、メッセージをいただけますか?

相澤先生) 先ほどから申し上げていますが、「受身の改革」ではなく、我々自身が「どうあるべきか」、そして、「何をするべきか」という、非常に大切な「あるべき姿」について、様々な角度から議論を重ねて行きたいと考えております。

本学会では、特別講演1題、シンポジウム10題、オピニオン1題、ワークショップ2題、モーニングセミナー1題、一般口演582題、ポスター発表80題のプログラムを組むことができました。

新緑の映える季節、自然豊かな軽井沢であるからこそ、少しゆったりと構えて頂き、病院の原点に返って「地域で治し支える医療はどうあるべきか」を考える学会にできればと思います。

多数の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

GALENUS) 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

第65回「日本病院学会」詳細
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●会期:2015年6月18日(木)~19日(金)
●場所:軽井沢プリンスホテルウエスト
●学会長:相澤孝夫(社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院 理事長・院長)
●後援:厚生労働省、長野県、松本市、軽井沢町、公益社団法人日本医師会、公益社団法人日本看護協会、一般社団法人長野県医師会、一般社団法人松本市医師会、一般社団法人長野県薬剤師会
●交通:学会ホームページにて参照
●ホームページ:第65回「日本病院学会」ホームページはこちら


special thanks to Dr.AIZAWA&Mr.KUBOTA.Mr.TERASAWA(jisenkai public relations officer)photo by YOSHIO KATAYAMA/text by GALENUS
※編集部の希望により、相澤先生には写真撮影にお付き合いいただきました。
appeared in 2015/03/05