医療資源を守るM&Aから生まれる『未来創造』へのチャレンジ 医療資源を守るM&Aから生まれる『未来創造』へのチャレンジ社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院
理事長 神野正博

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読者の皆様には「恵寿総合病院」や「神野先生」と記したほうがおなじみですが、石川県七尾市に本部がある社会医療法人財団董仙会は、今年80周年を迎えました。そして、時同じくして、2014年7月に企業立病院をM&Aにより経営統合し「恵寿金沢病院」が誕生、董仙会に加わりました。
異なるカルチャーの融合から、どのように地域の未来を見出すのか?
さまざまな変革を断行中の神野先生へインタビューをお願いし、法人の現状と医療全体のご所感を伺いました。

NTT西日本金沢病院から恵寿金沢病院へ

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GALENUS、以下G)2014年7月1日から恵寿金沢病院が社会医療法人財団董仙会に加わりましたが、経緯を簡単に伺えますか?

神野先生、以下神野)今回の旧NTT西日本金沢病院の経営統合は、戦略的にこちらから打診をしたものではなく、先方からお話をいただいたことが発端です。

そこからいわゆるM&Aを検討してきたわけですが、大学病院との関係が似通っていたり、血液がんであれば、旧NTT西日本金沢病院は金沢を中心とした地域の最後の砦であり、能登を中心とした地域であれば、恵寿総合病院が最後の砦であったりと、病院機能の面で共通項があることが改めてわかりました。

また人材面では、上田病院長他、2名の科長は、実は恵寿総合病院に勤務していた経験があったり、恵寿総合病院に在勤の医師が旧NTT西日本金沢病院に勤務していたことがあったりと、こちらも共通項があり、カルチャーの融合を含めて可能であると判断しました。

加えて、旧NTT西日本金沢病院の職員が、「統合するなら恵寿がよい」と言ってくれたことも、非常にうれしく、また後押しとなりました。


地域の方々にとっては、旧病院名に企業名が入っていましたから「社員専用の病院」と感じていたかもしれません。しかし、病院名の変更を皮切りに「地域の病院=私たちの病院」と感じていただけるようにしていきたいと思っています。

旧市街地にある恵寿金沢病院の環境とは?


G)恵寿金沢病院周辺は金沢の文化が色濃く残るエリアですが、動向を伺えますか?

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神野)恵寿金沢病院は、金沢の旧市街地で、周辺には「兼六園」や「金沢城公園」「金沢21世紀美術館」など文化的な施設が、また、少し歩けば繁華街である「武蔵ヶ辻」や「近江町市場」もあります。

病院の目の前には、小京都・金沢の三茶屋街のひとつ「主計町(かずえ町)」や浅野川界隈が広がり、観光だけでなく、居住地としても付加価値の高いエリアです。

この地域は、地方都市では多く現れている「ドーナツ化現象」も手伝い、高齢化と人口減という問題を抱えています。

しかし、大都市にあるような「都心回帰」という流れが少しずつ強まっているようで、病院の近隣には大型マンションの建築計画が出てきているようです。

大型マンションに象徴される「都心回帰」の傾向が加速すれば、小さな子どもがいる家族や、夫婦世帯など、若年層の流入も想定されます。

こういった兆しは、病院近隣の人口動態に影響を及ぼしていくと思います。

加えてこの地域にあった多くの病院は、「ドーナツ化現象」の加速ともに、郊外へ新築移転をしていますので、住民の「都心回帰」により、Common Disease(よくある病気)を含めた医療資源の枯渇が問題になってくると感じています。

恵寿金沢病院の近隣の医療機関は、療養型病院と診療所が多く、急性期の病院となると、国立病院機構金沢医療センターや金沢大学附属病院といった、紹介状がベースの大きな病院となってしまい、すぐに診てもらえる病院が少ない地域です。

こういう地域性のため、医療サービスの安定における恵寿金沢病院の役割は、今後、大きくなると思っています。

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恵寿金沢病院の目の前には、小京都・金沢の三茶屋街のひとつ「主計町(かずえ町)」が広がり、昔ながらの茶屋街や町屋が軒を連ねる。金澤出身の文豪、泉鏡花ゆかりの地で文学散歩としても興味深い。浅野川に沿って遊歩道も整備されており、夕方になると三味線の音が聞こえてくることも。

病院機能分化を考える

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G)地域での病院の役割に変化が生じると、病院機能の変更や拡張を行う必要も出てくると思いますが、いかがでしょうか?

神野)恵寿金沢病院の柱のひとつは「血液内科」です。冒頭にも申し上げましたが、「最後の砦」としての大きな役割を担っています。また、大学病院に近く、強い関係があります。したがって、非常勤の専門分野の医師が多い、という特徴も持っています。

これは非常に良い傾向と捕らえていまして、例えば、症例が少なく、病院経営上、常勤医を配置しにくい場合でも、大学から医師を派遣していただけますから、それだけ医療へ貢献できる度合いが高くなります。

ここはしっかりと継続していかなければなりません。

それと同時に、やはり「身近な病院」としての機能を強化していく必要があると思います。

G)機能強化を含め、今後の恵寿金沢病院のあり方について、イメージをお持ちですか?

神野)現在、7:1の89床ですが、白血病やリンパ腫など治療をじっくり行う患者さんを守りながら「どのように病院経営を安定させるか」を考えると、現在のままでの運営は非常に厳しいと思っています。

今は経営統合直後ですが、89床のなかで病床機能分化を思案しなければなりません。例えば、緩和ケア病棟の設置もありでしょうし、HCUもありかもしれません。7:1看護配置を前提に、地域包括ケア病床の設置も良いかも知れません。

患者さんと地域住民と職員の状況と、いろいろ勘案しながら様々な可能性を模索していきたいと思っています。

いずれにせよ『同じ仲間』ですから、部分最適ではなく、全体最適の中でいかに地域医療に貢献していくか、ここを中心に考えようと思います。

G)『同じ仲間』として「恵寿総合病院」「恵寿金沢病院」の2つの病院のシナジーはどのようにお考えですか?

神野)カルチャーの融合だけでなく、人材交流を通じた情報や技術の共有はもちろん、人材確保という観点でも、良い効果が出るのではないかと思っています。

恵寿金沢病院は市街地で、相対的に医療従事者数が多い地域です。立地も旧市街と、医師も看護師も職員も通勤や住環境が便利ですから、人材確保の面では、恵寿総合病院とは少し状況が異なると思います。


加えて、恵寿総合病院の医師の中には、金沢に自宅のある方もいます。そういう状況も踏まえて、次のモデルチェンジを図るときに、診療科や医師の仕事や勤務地のありようも変わっていくのではないかと思っています。


この回は、恵寿金沢病院についてお話を伺いました。次回は、地域包括ケア病棟や家庭医療専門医についてのインタビューをお届けいたします

社会医療法人董仙会 神野正博先生 プロフィール
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・社会福祉法人徳充会理事長
・公益社団法人全日本病院協会副会長
・一般社団法人日本社会医療法人協議会副会長
・一般社団法人七尾市医師会長
・石川県病院協会副会長
・特定非営利活動法人VHJ機構理事・VHJ研究会監事理事
・公益財団法人日本医療機能評価機構評議員、事業推進委員
・一般社団法人日本医療経営実践協会理事
・一般社団法人日本ホスピタルアライアンス理事
(委員)
【厚生労働省】医道審議会医師分科会医師臨床研修部会委員、医道審議会医師分科会医師国家試験改善検討部会委員、医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師特定行為・研修部会委員、医師臨床研修制度到達目標・評価の在り方に関するWG委員、(中医協)診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会委員
【石川県】石川県医療計画推進委員会 、医商工連携促進協議会会員
【四病協】総合部会員、医療安全対策委員会委員長、医療制度委員会委員
【日病協】代表者会議委員、診療報酬実務者委員会委員
【全日本病院協会】病院のあり方委員会、病院機能評価委員会、学術委員会、医療の質向上委員会、救急・防災委員会担当副会長
【日本病院会】インターネット委員会委員
【日本医師会】病院委員会委員
【石川県医師会】代議員、財政検討委員会委員、選挙制度検討委員会委員
【医師臨床研修マッチング協議会】運営委員
【医学書院】月刊「病院」編集委員


special thanks to Dr.KANNO&Mr.MURAMORI(keijyu public relations officer)photo by YOSHIO KATAYAMA/text by GALENUS
※編集部の希望により、神野先生には写真撮影にお付き合いいただきました。
appeared in 2014/10/01